小川町下里地区は、有機の里として全国に知られている。まだ日本に『有機農業』という言葉自体がなかった頃からコツコツと有機農業を続け、多くの研修生を世に送り出してきた金子美登さんの営む霜里農場。その農場を和ビーガンの第一人者として活躍する料理人、本道佳子さんが訪ねた。日本全国の農家さんを訪問している本道さんにとって、金子美登さんはずっと憧れ続けていた存在だという。

本道さん「全国の農家さんでよく金子さんのお話を伺っていました。ようやくお会いできて嬉しいです!20年かかりました!」感激もひとしおの本道さんの様子に、「わざわざ遠くまでようこそ」と、美登さんは照れたように笑った。

 

多種多品目の野菜を栽培する霜里農場は、本道さんがこれまで見てきた中でも、有数の規模の有機農場だという。案内してくれたのは霜里農場の後継者、宗郎さん。

本道さん「有機の畑がこんなに広大で素晴らしいですね。有機農業というのは、金子さんをはじめ、日本全国で実践されている方がいますが、もともと日本に昔からあったものを『有機農業』と言うんですか?」

宗郎さん「一口に有機農業といっても本当にいろいろな考え方があると思うんですけど、美登さんの大きな考え方のひとつに『里山や地域資源を循環させる』というものがあります。いちばん大切にしているのは里山の循環を支える土づくり。踏み込み温床といって、冬に山から集めてきた落ち葉やわら、農場の牛糞等を踏み固めて発酵させ、この発酵熱を利用してきゅうりやトマトなどの春夏野菜の苗を育てるための育苗土に使用しています。材料の80%は周辺の里山の落ち葉ですから、生き物のリレーのバトンタッチが行われて、はじめはカブトムシ、次はミミズなどが有機物を噛み砕いてくれて、最終的には微生物が細かく分解して、こういうサラサラの土になります。」

 

 

 

本道さん「では、小川町の有機農業というのは、ほとんどの農家さんが堆肥なども里山からの循環でつくる『小川町スタイル』という感じですか?」

宗郎さん「小川町の有機農業は多様さが魅力ですが、ひとつ共通点を探そうとすれば、全員ではないですけど、できる限りそういう風に里山の循環を大切にしている。山に囲まれていて、平らなところが少ないので、経営面積はすごく小さいところが多いですね。平らな土地の多いところは同じ有機農家でも大規模にやっていますが、小川町ではこんな風に少量多品目で、田んぼに行けばお米も麦も大豆もつくって、時どき食品加工もして。そういうライフスタイルを楽しみながら細々と、つまやかにやっている感じですね。」

本道さん「世界から見たら、有機栽培の野菜はまだまだ量が増えてこないじゃないですか。それは農家さんの問題ではなくて、使い手側の基準の問題だと思います。年中同じものが入ってこないと困りますとか。でも、農業ってそういうものではないので、昔から本末転倒な気がしています。例えばレストランなら、今できる旬の野菜でメニューを作れるようにならない限り、オーガニックと言ってもそれを使い切れないと思うんです。これからは、売り手や使い手側のサイクルを変えていかなければだめだと感じています。」

宗郎さん「消費者の方やレストランのシェフの方など、本道さんみたいな考え方の人も増えてきていると思います。小川町で暮らしたい、お店を開きたいという問い合わせも増えていますよ。少しずつ、理解のある人が増えてくれると嬉しいですね。」

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